【考察】舞台「マラソン」を全人類におススメしたい

 

 

 

 

私は、物語に触れた後の考察が好きだ。

 

 

 

 

小説然り、ドラマ然り、

そして、舞台も然り。

 

 

 

 

そんな私は、2019年5月31日、舞台「マラソン」に出会った。

 

 

自分が好きなジャニーズJr.が初主演を務める記念すべき舞台。

普段ミュージカルに出ている姿が印象的だった彼の、初のストレートプレイ。

初の二人芝居。そして公演ごとにマリオ役とスティーブ役をチェンジするという初の試み。

 

彼にとって初めての経験がたくさん詰まった舞台に、胸が躍らないわけはなかった。

 

 

 

 

 

ニューヨークシティマラソンに出場するためにランニングの練習をしている幼馴染二人の会話劇”

 

プライベートでも寺西くんと仲がいい矢田くんとの貝和劇は、きっとキャッチーで楽しい雰囲気が溢れる日常を描いたような、そんな舞台なんだろうと思ってた。

 

 

 

5月31日の初日を迎えるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《あらすじ》

(途中記載されているセリフは一部正確ではないものもあります。ご了承ください。またこのあらすじは馬鹿みたいに長くなってしまったので、観劇された方は考察部分まで飛ばすことを推奨いたします。いやほんと長え簡潔にまとめろ)

マリオ:マイペースで自由な性格。小さい頃の話や母親との思い出話を話す。事あるごとに足を止め引きかえそうとしたり、練習を中断し休憩しようとする。

ティーブ:ストイックで適者生存主義。自分の家族の話はあまりしない。理論的な話が好き。練習を休もうとするマリオを叱咤し励ましながら走っていく。

 

 物語はマリオが倒れているシーンから始まる。

ティーブが「マリオ~?」と声をかけるとマリオは「眠ってた」と言いながら立ち上がる。8日間も薬を飲んでいたのにまだ風邪が治らない、とぐずぐず言いながらも練習を休むつもりはない!と我儘を言うマリオを「線路まで行ったら帰って来よう」「お前のペースに合わせるよ」と宥め、二人は走り始める。

 

走っている道中で二人は自分の過去の思い出話や自分の価値観を語り出す。

ティーブが『俺にとっては無二のヒーローだ!』と嬉々として話すマラソンの起源となったフィディピディスという男にまつわる神話。マリオが幼少期に自転車競走をしたパーシバルとの話、普段は自分の感情を抑えて冷静なフリをしてしまうマリオが、マスキルパという男を初めて殴った時の話、スティーブの彼女であるアンナをマリオが奪ってしまった話、女と男の価値観の違いなど。時に言い争いになりながらも、仲たがいすることなく結局走り続ける姿に、彼らがお互い信頼している関係が見える。

 

その中でマリオが何度も「風邪が治りきってないんだと思う~」「少し休もう」「お前は行けよ!俺は戻る」「お前は(ランナーズ)ハイになれ、俺はいい」と走ることをやめようとするのをスティーブが『フィディピディスを思い出せ!パーシバルを思い出せ!』『リラックスしろマリオ!』と時には叱り、鼓舞しながら足を進めていく。

 

「あれ…車のキーが…」

『鍵がどうした』

「無いんだよ!!」

「スティーブ、やっぱり帰ろう」

『お前はいつも辞める理由を探してる!咳止め、抗生物質、標識、今度は車の鍵か!?』

 

と、スティーブは車の鍵のことは気にせずに走ることに集中しろ、と前を向かせる。

 

 ある地点を超えるとマリオは急に体が軽くなるような浮遊感を感じる。「頭がくらくらする」「体は最高に調子がいい!」「飛んでいるような気分だ!」と笑顔でペースをガンガン上げていく。スティーブが『ペースを落とせ!』『今スピードを上げると後でツケを払うことになるぞ!』と叫ぶ声を無視し、どんどん前へ進むマリオ。

 

「(走った時間が)1時間6分なんてことがあるか?まだ線路も超えてないのに」

『何言ってんだ、20分前に超えただろ』

「俺には見えなかったぞ!」

 

ティーブは足を止める。

「俺達、もう引き返した方がいい!」と途端に不安になるマリオに対して、ペースを落とせと言っていた先ほどまでとは一転『ダメだ』『走る事だけを考えろ』と一蹴するスティーブ。頭にいろんなことが駆け巡り一気に不安が押し寄せマリオはスティーブに急き立てるように質問をぶつける。

 

「親父の車をどこに止めたか思い出せないんだ!!」

『道路に置いてきたよ、俺達がスタートした場所のすぐ近くのカーブに…』

「…でも俺はお前んちに迎えに行ったんじゃなかったか…!?」

「道はまっすぐだったけど、急にきついカーブが来て、俺はギアを切り替え…て…俺はカーブを曲がり切ったのか!?!!」

『考えるなマリオ!今そんなことを考えても仕方がない』

「仕方がないってなんだ!?俺の車はどこにある!?」

『走る事だけを考えろ!』

 

と、ただ前に向かって走るように促すスティーブ。何年も前の事が次から次へと頭に浮かび、幼少期の母親との思い出を思い出して、「なんで今おふくろのことなんか考えるんだろ…なんで……なんで!!!!!」とその場にうずくまってしまうマリオに、スティーブがもう一度強く『走る事だけを考えろ!!!』と叱咤する。

 

『お前は今、信じられないスピードで走ってる』

『もうすぐニューヨークだ、ニューヨークに着くぞ、今夜』

 

その後もスティーブは、走っているマリオを励まし続ける。

「スティーブ、どこだ!!!」

『ここだ』

「見えない…俺は今どこにいる!?何にもわからないんだ!!!」

「寒い…」

『霜が降りているからだ』

「頼むスティーブ、お願いだから隣を走ってくれ、そんなに離れないでくれ!!!」

『できない、俺はもうここまでだ』

「一人で走るのは嫌だ、真っ暗なんだ!!!!こんな道俺は知らない、知らない!!!」

 

と、不安と恐怖に押しつぶされそうになりながらも、スティーブの励ましを受け、マリオは走り続ける。

 

『もうこれ以上、走れないってだけだ』

『お前一人で走らないといけないんだ』

「スティーブ、お前は俺の車に乗ってたか…!?それとも俺は、一人だったのか…?」

 

長い沈黙を経て、スティーブは答える。

『俺は、お前の車に乗ってなかったよ…。車に乗ってたのは、お前ひとりだった』

「くそ、なんてことだ」

「なんで最初に教えてくれなかったんだ、スティーブ」

 

マリオがすべてを察したとき、スティーブが去っていこうとする背中に向かって

「スティーブ俺を!!…赦してくれるか」

マリオの言葉を聞いて、スティーブは振り返り

「赦す、お前を赦すよ」と優しく答える。

 

「全部だぞ!!アンナの事も全部、…赦してくれるか」

『アンナの事は、とうの昔に許したよ』

 

その言葉を聞いてマリオは自分を奮い立たせるように足を叩き、また走り出す。

 

「スティーブ、車のキーを探して、親父に返してやってくれ。お釈迦になった車に、まだ刺さったままのはずだから…」

「俺のは、どんなニュースになるかな…なんて報道されるかなあ…」

 

 

冒頭の倒れているマリオの姿でが再び現れて、終演。

 

 

 

 

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あまりにも衝撃的なラストだった。冒頭の倒れていたシーンにそんな伏線があったなんて。体の中心からゾワゾワと鳥肌が湧き出てくるような感覚に至った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これ、私の好きなやつだ。

 

 

帰る電車の中で、記憶の欠片を拾い集めてメモに書き起こした。

きっとこの舞台には、いろんな伏線が張り巡らされているに違いない。そう思ったからだ。

 

観れば観るほど伏線に気づいて、新しい発見があって、その意図を確認するためにまた次の公演を観劇する。そんな舞台が好きだ。2週間楽しくて仕方なかった。

 

 

 

 

 

 

 

ここで記録として、自分なりに考察したものをいくつかまとめようと思う。 

 

 《考察》

【1】マリオが交通事故に遭い生死を彷徨う中で見た夢の話説

この説を提唱するにあたって一番有力だったのが最後の「車のキーを探して、親父に返してやってくれ」「お釈迦になった車に、まだ刺さったままのはずだから」という2つのセリフと、冒頭とラストのマリオが倒れているシーンだ。

事故を起こした直後、現実(実体)のマリオはまだ生死を彷徨っているだけで、死んではいないと仮定する。走っている中で同じコースを50回も走っていて馴染みのある景色のはずなのに「標識」を見逃したり、「線路」を超えたことに気づかなかったのは、夢の中で景色が曖昧だったからなのではないかと推測した。

マリオがペースを上げて走っていくシーンで「ペースを落とせ!」と言っているのは、現実(実体)のマリオが危篤状態もしくは心停止などに陥っていて、こっちの世界に戻ってこい!!と呼び戻している。線路を超えたところで「お前とはもう走れないんだ」と先程までの態度から一転したのは、現実(実体)のマリオがもう死亡してしまったため。もう何も気にせず、後ろを振り返らずに成仏してくれ、という思いから「走り続けろ」「もう何も考えるな」と言ったのではないかという結論に至った。

人間は死ぬ間際に走馬燈を見るという。母親のことを思い出したり、昔のことを次から次へと思い出していたのは、やはり死ぬ直前だったからなのだろう。

最後のシーンで「赦してくれるか」と言ったのは、自分が死んでしまうこと、ニューヨークシティマラソンに出るという約束を果たせないこと、という意味合いなのではないだろうか。

冒頭で「風邪が治りきっていない」と言っていたが、マリオは幼少期からよく薬を飲んでいた。今回の風邪も1日4カプセルの薬を服用していた。いつも何カプセル飲んだか途中で分からなくなる、と嘆くマリオに、スティーブが「お前は薬の飲みすぎで熱を出して、…」というシーンがある。普通なら熱を出してから薬を飲むものだろう、と違和感を覚えたが、検索してみると薬は飲みすぎると解熱効果を失い結果微熱やめまいなどの副作用が出ることがあるらしい。マリオが交通事故を起こしたのは、薬の飲みすぎによるめまい等が原因だったのかもしれない。

 

 

 

 

【2】スティーブが車に同乗していて交通事故により死亡、マリオは一命を取り留めた説

私は、自分が観劇した最後の日である6月14日まで、細部まで極力セリフを拾い考察してきたが、マリオが死んでしまう結論は揺るぎないものだと思っていた。いや、決めつけていたのかもしれない。

そんな中タイムラインに流れてきた、自分とは正反対の切り口での解釈。

 

 (掲載許可頂いております。locoさん、ありがとうございました。)

 

全身に電気が走った。本当に、脳天に雷が落ちたような衝撃だった。

同じ舞台を見ているのにこんなにも真逆に捉えられることが出来る、含みのある舞台「マラソン」が、さらに好きになってしまった瞬間でもあった。

 

ティーブが走っているときに「脾臓が痛む」と言うシーンがある。そのあと、マリオが「ニューヨークシティマラソン中に、男の脾臓、破裂~!」と新聞の見出しに見立てて茶化すセリフが続くのだが、脾臓破裂ってどんな時に起こるのだろう、と思い調べてみると、「腹に鈍性の外力(打撲、車両に挟まれるなど)が加わると、腹壁のけがはないのに脾臓が破裂することがあります。」と記されてあった。

また、「車のキーがない!」と慌てるマリオに「内側からロックしたんだろう」「窓ガラスなんか2秒で壊せる」と落ち着き払った様子で淡々と話していた。これも、マリオが起こした事故でスティーブが窓の外に放り出されたが故のセリフだとしたら、納得がいく。

このパターンでの結末について考えていた際、もう一つ引っかかっていたセリフを思い出した。それは、マリオがスティーブと口論になった際に放った言葉、「俺の葬式に来るのは4人だ」「お前、おふくろ、フィディピディス、パーシバル」である。

そう。父親の車を借りてきたと言っていたのに、葬式に呼ぶ人を挙げた時に父親は入っていなかったのだ。マリオは”親父”の話を一言も口にしなかった。思い出話に出てくるのは母親だけ。「俺が(車を)使ってることさえ知らないんだ~」というセリフも合わせて、マリオの父親はもう他界していて、「車のキーを親父に返してやってくれ」というのは、スティーブがあの世へ行ったら父親に返せるだろう、という意味合いなのではないかと考えた。

最後のシーンで「赦してくれるか」と言ったのは、自分が起こした事故で親友であるスティーブが命を落としたことに関して、という意味合いも含まれているのかもしれない。パターン1よりもこちらの「赦してくれるか」の方が、その言葉に含まれる想いが強く、切なく、心に響くような気がする。

 人は生死の境目に遭遇した時(いわゆる臨死体験)、光に向かっているような感覚、暗闇やトンネルに入る感覚、死んだ人などの影を見る、などといった共通の体験があるようである。マリオが一緒に走っていたのは、すでに交通事故で即死したスティーブの幻影だったのかもしれない。

 

 

 

【3】同じ世界線を走っていると思っていたら実は違う世界線だった説

1、2とどちらが生きてどちらが死んだかというところに論点を置いていたが、ここでは話のなかでマリオとスティーブのすれ違いを感じた部分について記していきたいと思う。

 

・練習を始める前、マリオが景色を見て「美しい~」といったのに対してスティーブが「暗くてよく見えないけど」と言っていた。

・目標地点としていた”線路”を超えたのに、マリオは見ていなかった(標識も然り)

・走っている道路(ステージ上)の矢印が二手に分かれている(ジャニーズwebの寺西くんの連載を見て気づいた)(遅い)

 

まだまだ取りこぼしている二人のすれ違いがあったのかもしれないが、このことから

二人は同じ世界を走っているのではなく、違う世界線で並走していたのかもしれない、と考えた。

線路を超えたことに「気づかなかった」とマリオが言った瞬間、スティーブは足を止めた。ここで、スティーブはもう同じ世界を走ることはできないと察したのかもしれない。

 

 

 

 

 

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このブログをまとめている最中にも、いろんな思いや疑問などが頭に浮かんで、また観たくなってしまった。こんなにも深みがあって含みがあって見ごたえのある舞台に出会うことが出来て、私は本当に幸せだと思う。

 

主演の寺西拓人くん、矢田悠佑さん、脚本を書いてくださったTETSUHARUさん、DDD青山クロスシアターのスタッフのみなさん、及び舞台「マラソン」に携わったすべての方々にお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 

 

 

 

残念ながら舞台「マラソン」は、6月17日に千秋楽を迎えている。

いつかまた、マリオとスティーブに会えると信じて、再演を願うばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

以上!

 

《追記》

このブログ内で一切綴っていないけど(最初は書いてたけど文字数が1万文字を超えそうだったので泣く泣く割愛した)二人の演技が本当に凄くて、最後のたたみかけるシーンでは息をのみすぎて呼吸の仕方がわからなくなりました

セリフ量が莫大で一役入れるのも大変なのに毎公演ごとに役を交換して、その上殆ど走りっぱなしなんて、身体的にも精神的にも超ハードだったんだろうな…本当に本当にお疲れ様でした…!

寺西くんがイキイキお芝居しているところが見られて幸せでした!再演希望!です!